ストックフォトで振り返る日本社会の20年:PIXTAが分析する「旅行像」の変遷

旅行

日本の旅行市場とストックフォトの役割

2026年には燃料高騰によりゴールデンウィークの移動コストが上昇し、国内旅行や近場での体験型旅行への関心が高まるなど、旅行のあり方そのものが再定義されています。

日本の旅行市場は、1964年の海外旅行自由化以降、団体旅行から個人旅行、そしてSNSによるビジュアル動機型旅行へと大きく変化してきました。かつては遠くの有名地へ行くことがステータスであり、写真は到達の証拠としてのランドマーク撮影が主流でした。しかし現在では、効率的な観光よりも、自己成長やウェルネス、環境保護といった個人の価値観に基づいた意味のある体験や、日常の延長にあるワーケーションへと軸足が移っています。

このような変化は、ストックフォトのビジュアルにも明確に表れています。20年前の「ランドマーク重視」から、現在の「日常の延長にある贅沢」へと、ビジュアルの潮流が変化していることがデータから可視化されています。

創業時と現在の「旅行像」の比較

PIXTAのサービス開始から数年間(2006年〜2010年)は、場所への到達を示す風景写真が中心でした。しかし、現在(2020年〜2026年)では、どのように過ごすかを表現する人物・ライフスタイル素材が主流となっています。この変化は、旅行に求めるものが「非日常の消費」から「体験・ライフスタイルの表現」へとシフトしたことを示唆しています。

創業時(2006年〜2010年) 現在(2020年〜2026年)
売れ筋の被写体 人の写っていない風景・絶景 人物・過ごし方・ライフスタイル
人気の舞台 海外有名観光スポット、南国ビーチ 国内ローカル、グランピング、サウナ
旅のスタイル パッケージツアー・非日常の消費 ワーケーション・体験・生き方の延長
注目キーワード リゾート、ビーチ、海外旅行、ツアー、デジカメ、ピース インバウンド、ワーケーション、サウナ旅行・サ活、グランピング

過去と現在のライフスタイルや旅行先を対比する画像

ビジュアルと検索ワードに見る20年の変遷

20年間の販売データと検索ワードを分析すると、旅行ビジュアルは社会の変化とともに以下の4つの時代を経て変容してきたことがわかります。

〜2010年:ガイドブックとデジカメの時代「誰もいない絶景」

この時期は、南国のビーチや海外有名観光スポットなど「人の写らない風景写真」が売れ筋の大半を占めていました。当時は日本人モデルを使った人物素材が少なく、広告素材には非日常感のある純粋な絶景が求められていたと見られます。

フィレンツェの街並み、花畑、観光バス、南国のビーチ、そして青空を飛ぶ飛行機がコラージュされた、多様な旅行の情景

〜2015年:「風景」から「過ごし方」への主役交代

写真の主役は風景から「人物(特に2人以上の女性)」へと大きくシフトしました。2012年のLCC元年によりアジア圏への渡航ハードルが下がり、旅行の主役が「場所」から「誰とどう過ごすか」へと移行。現地のカフェでくつろぐ姿など、過ごし方に焦点を当てたリアリティのある素材が広告で求められるようになりました。

友人とのスマートフォン閲覧、旅行準備、空港、ビーチでの休暇、街での地図確認など、旅の様々な場面が描かれた画像

〜2020年:全方位への多様化と「エモさ」の追求

女子旅からファミリー、シニア夫婦、ソロ活など、被写体は全方位に拡大。2017年の「インスタ映え」流行語大賞に象徴されるSNS全盛期を経て、作り込まれた笑顔よりも、情緒的な「空気感(エモさ)を持つ写真」が求められるようになりました。旅行の動機が「有名な場所へ行く」から「SNSで共感を得られる体験をする」へと変化したことが、ビジュアルにも反映されています。

家族旅行、子供の温泉入浴、ひまわり畑、市場での友人とのひととき、カップルの休憩風景など、様々なテーマの6つのシーンを組み合わせたコラージュ

2020年代前半〜:新常識の定着と「日本らしさ」の再発見

コロナ禍による渡航制限(2020〜2022年頃)を経て、旅行観が根底から変化しました。円安・インフレによる海外旅行のハードル上昇を背景に、グランピング・サウナ・ワーケーションなど「遠くへ行かなくても豊かな旅ができる」ライフスタイルを表現した素材が急増。同時に、インバウンドの急増を受けて、日本を象徴するビジュアルへの需要も拡大しています。

東京観光を楽しむ人々、家族でのキャンプ、バルコニーでのリラックスタイム、大阪道頓堀の街並み、そして自然の中で散策するシニアカップルという、多様な日本のライフスタイルや旅行シーンを捉えた5枚の写真

日本人の次の欲求を示す売れ筋素材とAI学習データとしての価値

現在求められるビジュアルは、有名なランドマークや観光地を象徴するような写真から、「ディープな地方」や「生活の息遣いを感じるローカルな風景」へとシフトしています。動画のワンシーンを切り取ったような躍動感や、あえてブレやノイズを残した、無加工でドキュメンタリー調のリアルな表現も需要が高まっています。

企業の広告素材としては、環境配慮や多様性に配慮したビジュアル(マイボトル持参、バリアフリー旅行、多国籍家族など)へのニーズが拡大しており、完璧な演出からリアルな自然体への変化は、日本人の消費観の深化を反映していると言えるでしょう。

本プロジェクトで扱われるデータは、次世代のAI開発を支える「文化的多様性の基盤」としての側面も持っています。PIXTAは「ワーケーション」「手元作業」「関係性重視」といった日本市場特有の詳細なメタデータを付与しており、文脈を理解する精度の高いAI学習を可能にしています。すべての素材は適切な権利処理がなされており、AI学習における倫理的かつクリーンなソースとして活用されています。

今後の展望

PIXTAは「ストックフォト企業」から「日本文化のデータアーカイブ企業」へとその役割を拡大し、ビジュアルデータの価値を文化資産として再定義していく方針です。6月上旬には、20周年特別プレスリリースとして、時代を映したビジュアルの変遷が公開され、その後も様々な切り口で分析が順次配信される予定です。

PIXTAに関する詳細は、以下のリンクからご覧いただけます。

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