笛吹市教育委員会とディスカバリーズが連携し、小中学校の校務に生成AI活用支援を開始

テクノロジー

支援の背景と教育現場の課題

ディスカバリーズは、「働くすべての人たちがイノベーションをもたらす世界を創る」というビジョンを掲げており、この対象には日々子どもたちと向き合う教職員も含まれています。教育現場における生成AI活用には、主に以下の三つの課題があると認識されています。

  1. 校務負担が「子どもと向き合う時間」を圧迫している: 学級通信や保護者連絡、会議記録、指導案作成といった校務が教職員の大きな負担となり、本来最も大切にすべき「子どもと向き合う時間」を圧迫している現状があります。
  2. 不安と指針の不在が、最初の一歩をためらわせている: 生成AIは校務を支援する有効な手段となり得ますが、現場には「使い方が分からない」「使ってよいのか判断できない」といった不安が存在します。活用を後押しする明確な指針(ガイドライン)の整備も、多くの現場で進行中です。
  3. 管理職の姿勢が、現場の活用を左右している: 現場での活用は、管理職の理解や姿勢に大きく影響されます。多くの管理職は生成AIを否定しているわけではなく、「何かあったときの責任」や「正しい知識を持つ機会の不足」から、慎重にならざるを得ない状況です。

これらの課題は、特定の地域だけでなく、全国の教育現場や民間企業にも共通するものです。ディスカバリーズは、これまでの数多くの組織での生成AI活用支援の経験から、現場の意欲だけでは活用は広がらず、管理職の後押しがあって初めて組織に定着するという構造を把握しています。この構造は教育現場でも同様です。

教育現場においては、企業での活用目的が「効率化」に重点を置くのに対し、先生方の仕事には児童・生徒のために時間をかけるべき大切な業務があります。生成AIに任せるべきは、アンケート集計、お便りの文面調整、クラス分けや班分けといった、教職員の時間を奪う作業であり、これにより生まれた時間を先生が本当に注ぎたいことに振り向けられるようになります。このような教育現場特有の事情を踏まえ、ディスカバリーズは管理職への働きかけを支援の柱の一つに据え、現場の意欲を組織の力に変える支援を設計しました。

笛吹市教育委員会は、これらの課題に早期から取り組み、各校にICTリーダーを配置するなど、現場主導で活用を広げる独自の体制を構築してきました。今回の取り組みは、この基盤の上に、ディスカバリーズが民間企業で培った活用支援の知見を活かすものです。ディスカバリーズは、ツール導入だけでなく、利用者一人ひとりの不安に寄り添い、実際に業務で活用できる状態になるまで伴走する支援を目指しています。教育現場での教職員の挑戦を支援することは、ディスカバリーズのビジョン実現に直結するものであり、今回の取り組みはその第一歩となります。

校務での生成 AI 活用支援 全体像

取り組みの概要

ディスカバリーズは、笛吹市教育委員会と連携し、市内の19校(小学校14校・中学校5校)のICTリーダー計38名を中心に支援を実施しました。4月から現場状況の把握を進め、5月19日から6月19日までの約1か月間を「集中利用期間」と設定し、以下のステップで教職員の校務における生成AI活用を支援しました。

1. 現状調査とヒアリング

まず、各校のICTリーダーを対象とした利用状況アンケート(回答38名)を実施し、校長・教員へのヒアリングも行いました。データと現場の声の両面から実態を把握することで、その後の施策を的確に設計する土台を築きました。

調査の結果、活用の素地が既に育っていることが判明しました。プライベートで生成AIを使った経験のある教員は9割(97.3%)に上り、校務でも「ほぼ毎日」「週に数回」利用する積極利用層が過半数(65.4%)を占めていました。「所見」「保護者連絡」「行事文書」など、今後活用したい校務への意向は現状の利用実態よりも幅広く、現場の期待の高さがうかがえました。

一方で、活用をさらに広げるための課題も明らかになりました。校務での利用では「回答の正確性への不安」に次いで「管理職の考えが気になる」が上位に挙げられ、心理的な安心感の醸成が鍵であることが示唆されました。

校務でCopilotを使う上でのハードル

さらに、全職員を対象とした実際の利用状況を分析したところ、興味深い実態が浮上しました。校務での利用が最も活発だったのは校長をはじめとする管理職層であり、校長の平均プロンプト提出数は月300回を超えていました。これは、ICTリーダーが「管理職の考えが気になる」と感じる一方で、実際には管理職こそが日常的に生成AIを使いこなしているという、認識と実態のギャップがあることを示しています。この発見は、管理職を「活用を妨げる存在」ではなく「現場の活用を後押しする推進役」として位置づける、後の働きかけ(ステップ4)の重要な根拠となりました。

教職員利用状況: 職種別の特徴

これらの結果から、個人の素地は十分にあるものの、「組織的なルール」と「心理的な安心感」が活用拡大のボトルネックとなっていることが判明し、その後のステップ(研修・伴走・管理職への働きかけ・ガイドライン整備)を設計する明確な指針となりました。

2. 教職員向け体験型Copilot研修

5月26日には、体験型研修「Copilotはじめの一歩 〜まずは触ってみよう!体験型研修〜」が現地とオンラインのハイブリッド形式で実施され、計70名(現地14名・オンライン最大56名)の教職員が参加しました。この研修では、「実際の校務シナリオを題材に、自分の業務で試すきっかけをつくる」ことに重点が置かれました。生成AIの仕組みや得意・不得意、注意点を短時間で確認した上で、大半の時間を教職員が日常的に行っている校務を題材にしたハンズオンに充てられました。

具体的なハンズオン内容の例として、以下のものがあります。

  • Copilot Chatで調べてまとめる

  • 授業1回分の指導計画を作成する

  • 学級通信の下書きを作成する

  • Formsで集めた委員会の希望調査をExcelにダウンロードして活用する

  • Formsで集めたアンケートをExcelにまとめ、Wordでレポートを作成する

「便利そう」という抽象的な理解ではなく、「明日から自分の校務に生かせる」という具体的な手応えを持ち帰ってもらうことを目指しました。研修当日は、「Copilotで作成した学級通信に写真やイラストを入れる方法」「Copilotの回答をWordに書き出す手順」といった、実務に直結する質問が多く寄せられました。こうした反応からは、文書作成や事務作業に対する関心の高さと、その裏返しとしての日常的な業務負荷の大きさが改めて浮き彫りになりました。実務に即した題材を通じて体験することが、活用イメージの具体化に直結することが確認できた研修となりました。

Copilot Chat 校務シナリオでCopilot Chatを使おう!ハンズオン

3. Copilotフォローアップ相談会

研修は「受けて終わり」になりがちであり、実際に校務で試してみると、その場では気づかなかった疑問や戸惑いが必ず出てきます。そうした声を放置すると、せっかく芽生えた「使ってみよう」という意欲は薄れてしまいます。そこで、研修後の5月28日から6月18日にかけて、週次のフォローアップ相談会(計4回)がオンラインで開催されました。これは、試す中で出てきた疑問を気軽に持ち寄り、一緒に解消できる場として設けられたものです。一度の研修で完結させるのではなく、現場が実際に手を動かす期間に寄り添い続けることを意図した、活用支援の一環です。

4. 管理職向け研修

現場での活用は、管理職の姿勢に大きく左右されます。これは民間企業のAI活用支援でも繰り返し直面してきた構造であり、教育現場も例外ではありませんでした。一般に管理職は、生成AIを否定しているわけではなく、「何かあったときの責任」や「正しい知識を持つ機会の不足」から慎重にならざるを得ないのが実情です。現状調査でも、ICTリーダーが感じるハードルの上位に「管理職の考えが気になる」が挙がっており、管理職の一言が現場の動きを左右することがうかがえました。

そこで、管理職を対象とした「生成AIのよくある誤解と正しい理解」を骨子とした研修が実施されました。狙いは、管理職の役割を、活用の可否を「判断する人」から、現場の挑戦を「後押しする人」へと転換することです。セッションでは、管理職層に多く見られる代表的な誤解を取り上げ、一つひとつを正しい理解へと置き換えていきました。

  • 「AIに任せると、自分で考えなくなる」 → AIは考えを深めるツール。最後に思いを込めて伝えるのは人の役割

  • 「出力が正確じゃないから心配」 → 最終的に判断するのは人。確認体制のもとで使うことが大前提

  • 「自分が使えないから、推進できない」 → 管理職が使いこなす必要はない。「使っていい」と後押しするだけでよい

  • 「何かあったとき、責任が取れない」 → 管理職の役割は、組織として安全に使われる仕組みを整えること

その上で強調されたのは、「やらない理由」ではなく「やる理由」を語れる管理職へ、という転換です。ここで支えとなったのが、現状調査で見えた認識と実態のギャップでした。現場が管理職の目を気にする一方で、実際には管理職層こそが日常的に生成AIを活用していました。既に使いこなしている管理職が、その経験をもとに「これは使える」と現場の背中を押す、この構図こそが、活用を組織全体へ広げる推進力となります。

「やらない理由」より「やる理由」を語れる管理職へ。

5. ユースケースの集約と横展開

取り組みの成果を感覚ではなく具体的な変化として捉えるため、集中利用期間の前後でアンケートを実施し、理解度・行動・成果・認識変化の4観点で比較しています。併せて、「集中利用期間中に1人1ユースケース」を合言葉に、教職員が校務の中で実際に試した活用事例を収集しています。

ここで大切にされているのは、うまくいった事例だけでなく、思うようにいかなかった工夫も含めて拾い上げることです。集まった事例は、学校の枠を超えて共有できる形に整理され、現場同士が学び合える土台にしていきます。一つの成功例を一人で抱えるのではなく、現場から現場へと活用の輪が広がっていく、その横展開こそが、取り組みを一過性で終わらせないための鍵だと考えられています。

なお、今回の集中利用期間の成果を踏まえ、8月上旬には全教職員を対象とした研修の実施が予定されています。

今後の展望

ディスカバリーズは引き続き、教職員が安心して生成AIを試し、自分の業務で使いこなせる状態づくりを支援していく方針です。ディスカバリーズの支援は「伴走」を目指すものであり、最初のきっかけづくりを担いながらも、最終的には現場が自分たちの力で活用を進められる状態を目指します。笛吹市での実践で得られた知見は他地域の教育現場へも広げられ、教職員が子どもと向き合う時間を増やせるよう、現場に寄り添った支援が続けられます。

笛吹市教育委員会様のエンドースメント

笛吹市教育委員会学校教育課 統括情報通信技術支援員 土田 純氏は、次のように述べています。

「本市では、令和4年度から各校に校務や授業でのICT環境の活用を推進する『ICTリーダー』を置き、以前から現場での生成AI活用を広げる取り組みを進めてきました。今回、外部の専門的な知見が加わったことで、教職員の活用が前進し、管理職を含めた学校全体に前向きな変化が広がっています。市内全校への展開が一巡し、ここからは本格的な活用に向けた段階に入ります。私たちがめざすのは、生成AIによって余剰時間を創出し、それぞれの先生方が本当にやりたかったことへの時間や、子どもと向き合う時間を増やせるようにすることです。各学校が自律的に活用を進められるよう、教育委員会として引き続き環境を整え、現場をしっかりと支えてまいります。」

ディスカバリーズについて

ディスカバリーズ株式会社は、「働くすべての人たちがイノベーションをもたらす世界を創る」をミッションに掲げ、コミュニケーションやコラボレーションを再設計し、AIで組織のナレッジを人に繋げて新しい価値(=イノベーション)を生みやすい組織変革を目指したAX(あらゆる業務にAIを組み込んだ組織のトランスフォーメーション)でお客様の成功を支援しています。

SaaS型クラウドサービスの開発・販売と、上場企業100社以上の実績を持つコンサルティング・サービスを提供しており、マイクロソフト認定ソリューションパートナーとして、2011年にはマイクロソフト パートナー オブ ザ イヤーを受賞しています。

詳細は以下の公式サイトをご覧ください。
https://discoveries.co.jp/

各種リンク

コメント