ベッコフのPC制御技術が革新するパワー半導体評価:インフィニオンのテストラボが劇的に効率化

テクノロジー

ベッコフのPC制御技術が支えるパワー半導体評価

ドイツのベッコフオートメーションが提供するPC制御技術は、世界中の多様な産業分野で利用されています。今回、ドイツのInfineon Technologies AG(以下、インフィニオン・テクノロジーズ)のパワー半導体テストラボにおける導入事例が公開されました。

インフィニオン・テクノロジーズの取り組み

パワーサイクル試験において、半導体に繰り返し負荷をかけた際の接合部温度を正確に把握することは、信頼性評価の精度を決定する重要な要素です。この試験に先立って、接合部温度の較正曲線を取得する作業が不可欠となります。インフィニオン・テクノロジーズは、この重要な工程にベッコフのTwinCATとEtherCAT計測ターミナルELM3xxxシリーズを活用した自動テストベンチを導入し、計測精度の向上とテストラボ全体の試験効率の大幅な改善を実現しました。

パワー半導体製造の中核拠点・ワルシュタイン工場

インフィニオン・テクノロジーズは、ドイツのワルシュタイン工場をパワー半導体製造の中核拠点としており、数アンペアから3,000Aまで、幅広い通電容量を持つパワー半導体を開発・製造しています。この工場は、研究開発およびフレーム・パワー・モジュール(FPM)と呼ばれるパワーモジュール製品の製造における主要拠点でもあります。これらのモジュールは、電気自動車(EV)用インバーター、産業用・鉄道用の駆動装置、風力発電・太陽光発電設備など、世界中の多岐にわたるアプリケーションで活用されています。

同社のテストラボ責任者であるマーティン・ロッケラート博士は、パワーサイクル試験の重要性について、「パワーサイクル試験のためのテストベンチは、投資およびインフラ要件の観点から、生産拠点の最大のコスト要因のひとつです。そのため、テストベンチは可能な限り効率的に活用する必要があります」と説明しています。また、テストエンジニアのマーティン・ザイデルマン氏は、較正曲線取得の重要性を強調し、「これらの温度特性は、その後、性能評価用テストベンチで実施される全テストの基盤となります。負荷時の接合部温度を、迅速かつ正確に算出できるためです」と述べています。

自動化による課題解決

従来の較正曲線取得作業では、計測電流やゲート電圧の手動設定が必要であり、モジュール接点に発生する電圧は較正済みレコーダーで記録されていました。計測中に異常が発生しても自動検出や通知機能はなく、レコーダーはネットワークに接続されていなかったため、計測値はSDカードやUSBメモリーを介して別のPCに取り込み、温度特性を計算する必要がありました。このような手作業と属人的な運用が非効率を招き、2023年ごろからテストベンチの自動化が検討され始めました。

TwinCATとEtherCAT計測ターミナルが実現した全自動テストベンチ

PC制御とTwinCATを採用した新しいテストベンチは、長時間の立ち上げ作業を必要とせず、ダイオード、IGBT、SiC MOSFETなど、さまざまな種類の半導体モジュールの較正に対応します。最大32個のモジュールを炉内に設置・配線し、TCP/IPとTwinCATによって制御された正確な電流を印加します。指定温度に到達すると、EtherCAT計測ターミナルのELM3102-0100がモジュール接点電圧を24ビットの分解能と0.01%の精度で計測・記録し、高い信頼性で較正曲線を算出します。

ザイデルマン氏は、EtherCAT計測ターミナルの精度について、「テストベンチを較正した際、ベッコフのELMターミナルが示した電圧値は、小数点以下6桁まで較正標準と一致しました」と高い評価を示しています。

計測電流の生成においても、標準品のEtherCATターミナルのみで対応しており、LED制御用ターミナルとアナログ入力ターミナルを組み合わせることで、0.1mAの精度で10〜500mAの計測電流を制御し、各チャンネル間の絶縁も電源供給ターミナルとの組み合わせで実現しています。

制御には組込み型PCの「CX5140」とTwinCAT 3が採用され、既存の計測ソフトウェアであるLabVIEW™とシームレスに連携することで、すべての設定値と計測値がリアルタイムで管理されています。

ザイデルマン氏は、テストラボ自動化の成果について、「試験準備は、オペレーターが計測対象モジュールのIDを入力するだけです。炉の制御や計測電流、ゲート電圧の設定など、残りの処理はTwinCATが担います」と述べています。

テストラボ全体での効果

電子機器のテスト環境

今回の自動化により、1回の試験あたり約1時間の立ち上げ時間が削減され、計測精度と信頼性が大幅に向上しました。夜間の無人稼働も可能となり、1日2回の試験実施が実現しています。また、TwinCAT経由での炉扉の自動開放により冷却時間が短縮され、次の試験準備をより早期に開始できるようになりました。このようなスループットの向上は、総合設備効率(OEE)の改善に直結するだけでなく、開発部門から求められる厳しい納期への対応力も高めています。

今後は、モジュールIDに基づいて較正曲線のデータを中央データベースから自動取得する仕組みの構築を目指しており、「OEEのさらなる向上につながる」とザイデルマン氏は意欲を示しています。今回の成果を受け、同様のシステムを2拠点に展開する計画で、うち1拠点はハンガリーの生産拠点への導入が予定されています。

関連情報

ベッコフオートメーション 会社概要

ベッコフオートメーションは、PC制御に特化した制御機器メーカーです。独自の計測・制御ソフトウェア「TwinCAT」により、Windowsなどの汎用OSを搭載した産業用PCをリアルタイムコントローラ(NCやPLCなど)として活用することを可能にしています。また、高速・高同期の産業用通信規格「EtherCAT」の開発元でもあり、その推進団体であるEtherCAT Technology Group(ETG)は、76カ国・地域の8,100以上の組織が参加する世界最大の産業用通信規格推進団体として知られています。TwinCATやEtherCATを搭載した産業用コントローラは、産業用ロボット、自動車、包装機械、工作機械、風力発電設備など、世界中の多様なアプリケーションで採用されています。

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