奈良市、AI専門部署設置1年で行政改革を加速化 業務効率化と市民サービス向上の実績を報告

テクノロジー

AI活用推進の背景

人口減少による働き手不足や市民ニーズの多様化といった社会情勢の変化に対応するため、奈良市はテクノロジーの力を最大限に活用し、地域の課題解決を図っています。AI技術の飛躍的な進化を背景に、業務効率化と市民サービスの向上、そして持続可能な行政経営の実現を目指しています。

令和7年度の主な取り組みと実績

AI活用推進課は、ニーズの把握、指針の策定、利用環境の整備などを通じて、全庁的なAI活用を推進しました。

職員リテラシーの向上と業務効率化

職員のAIリテラシー向上を目的とした研修が実施され、特に管理職向け研修後には課長級職員の生成AIサービス利用率が38%から74%へと大幅に上昇しました。これにより、生成AIサービスを活用した業務効率化が着実に進み、令和7年度下半期には文章の作成、要約、校正といった業務で約17,200時間(約17.5人月分)もの業務時間削減を実現しました。導入された生成AIサービスで計算された業務削減時間は、令和8年3月時点で約4,300時間と報告されています。

具体的な活用シーンとしては、以下のような業務が挙げられます。

  • 議事録作成:会議の録音を生成AIにアップロードし、指示するだけで文字起こしと要約が瞬時に可能になります。

    議事録作成

  • 説明資料作成:制度の要綱をもとに、スライドの構成、図表、想定問答まで生成AIが作成をサポートします。

    説明資料作成

  • 国通知の読み込み:大量の通知資料も、生成AIに内容を分かりやすく要約させることで、迅速な把握が可能になります。

    国通知の読み込み

市民サービスの拡充

1. 市公式ホームページ AIチャットボット

令和7年8月7日より、市公式ホームページにAIチャットボットが導入されました。これにより、24時間365日いつでも問い合わせ対応が可能となり、市民の利便性が大幅に向上しました。半年間の実績をもとに換算すると、年間で延べ22,000人の利用があり、約46,000件の質問に対応しています。

市公式ホームページ AIチャットボット

導入前は閉庁時間外の問い合わせが困難でしたが、AIチャットボットの導入により、いつでもどこでも最新AIとナレッジを活用した問い合わせ対応が可能になりました。

AIチャットボット導入前後

2. 次世代クラウド電話〈Zoom Phone〉

令和8年3月16日からは、次世代クラウド電話「Zoom Phone」が導入されました。本庁・西部出張所の電話機1,030台がZoom Phoneに切り替わり、電話業務のデジタル化が推進されています。導入に際し、コールセンターの入札に先行してシステム入札を行った結果、コールセンター受託事業者の入札価格が3分の1に抑えられ、年間約5,000万円の大幅な削減につながりました。今後は全庁的に展開し、AIによる通話要約機能も活用しながら、市民を待たせない業務効率化と「電話によるワンストップサービス」の確立を目指します。

次世代クラウド電話〈Zoom Phone〉導入後のフロー

今後の実装・活用予定

奈良市は、さらなるAI活用を進めることで、市民サービスの質向上と行政運営の効率化を目指しています。

AIを活用した相談業務

普及率の高いLINEプラットフォームを活用し、対話を通じて利用者の心情を汲み取る「傾聴型AI」の検証を実施しました。デジタル技術を用いた24時間365日体制の「寄り添い型」アプローチにより、相談に対する心理的ハードルを下げ、適切な公的支援への橋渡しを目指します。

AIアシスタント「AIちゃん」

「おやこよりそいチャット奈良」(子育て世代向け)や「シニアよりそいAI『AIちゃん』」(シニア層向け)などのプロジェクトが実証実験中で、AIと人のハイブリッドによる相談支援を通じて、孤独感の解消や必要な支援への接続を目指します。

AIちゃん相談イメージ

児童相談業務のデジタル化

児童相談業務において、職員が家庭訪問時に専用タブレットを活用することで、現場で過去の記録確認や相談内容のメモ、記録のAI自動要約が可能になります。これにより、帰庁後の事務作業を削減し、子どもたちへのより手厚いサポートに時間を充てることが期待されます。

児童相談業務におけるタブレット活用

また、一時保護所の複雑なシフト作成にもAIが活用されます。職員の専門スキル、育児や介護といった個別事情、法律で定められた休息時間など、数千通りもの組み合わせを考慮する必要があったシフト作成が、AIによって最適化され、年間117時間かかっていた作業が13時間へと大幅に削減されます。

シフトのイメージ

新たなインフラ構築

個人情報を扱う業務でのAI利用に向け、自治体専用のローカル環境やガバメントクラウド環境でのAI活用を検証中です。これにより、極めて秘匿性の高い情報を安全に扱うための閉域網環境の整備と、拡張性と利便性を備えたクラウド基盤上での高度な利用の両立を目指し、部署や業務におけるAIデバイドの解消を図ります。

新たなインフラ構築イメージ

今後の展望

AIの活用により、奈良市役所の業務は大きく変革すると予想されます。ルーティンワークはAIに任せ、職員は「現場」と「対話」に注力することで、複雑な悩みや温かい支援が必要な市民へのケアを最大化していくことでしょう。

奈良市役所の未来像

市民サービスの高度化として、AIが市民に合わせたライフイベントを予測し、手続きや制度をプッシュ型で通知するような未来も描かれています。

奈良市のAI活用に関する詳細情報は、以下のリンクからご覧いただけます。
https://www.city.nara.lg.jp/site/press-release/263746.html

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