三菱総合研究所とPKUTECHが「AI Memory RAG」を共同開発、時系列・経緯を踏まえた意思決定を支援

テクノロジー

「AI Memory RAG」共同開発の背景

株式会社三菱総合研究所(MRI)とPKUTECH株式会社は、生成AIの新たなRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術である「AI Memory RAG」を共同開発しました。この技術は、情報の時系列変化や意思決定の経緯を考慮して回答できる点が特徴です。

近年、業務における生成AIの活用が広がる中で、RAGは企業独自のデータを活用し、回答の正確性を高めるために広く利用されています。しかし、従来のRAGには以下のような課題がありました。

  • 日々更新されるニュースや議事録など、継続的に蓄積される情報の変化を追跡しにくい点。

  • 過去の議論や変更の経緯、合意形成プロセスを踏まえた回答が難しい点。

  • 一見独立した出来事同士の関係性や、時間経過による変化を把握しづらい点。

特に、MRIが注力するインテリジェンス領域や、PKUTECHが展開する議事録管理・問い合わせ対応支援領域では、情報の「時系列性」と「文脈の蓄積」が重要であり、これまでのRAGでは十分な対応が困難でした。

このような背景から、両社は、生成AIが過去の情報や対話履歴、蓄積された知識を継続的に記憶・活用する「AI Memory」を基盤とし、情報の時系列性や文脈を適切なデータ形式で保持・検索する技術を付加することで、「AI Memory RAG」を実現しました。この技術は現在、特許出願中です。

「AI Memory RAG」の概要と特徴

「AI Memory RAG」は、ニュースや議事録などを主な検索対象とし、既存のAI Memoryがデータを保存する方式を拡張しています。この技術の大きな特徴は、時系列的な変化や人物・キーワード間の関係性を考慮するために、文書の内容や特性に応じてデータを構造化して保存する点です。

具体的には、まずニュースや議事録などの文書データをページ、章、表、メタデータなど複数の粒度で分解します。その後、分解したデータの内容に応じて保存形式を自動判定し、以下の構造で保持します。

  • 時系列構造:議論や出来事の推移を時間軸に沿って保存します。

  • グラフ(ネットワーク)構造:発言者、キーワード、関連人物などの関係性を構造化します。

  • リポジトリ(変更履歴)構造:要件定義書や法令など、変更履歴が重要な情報を管理します。

回答生成時には、これらの構造化データをAI Memoryの問い合わせ処理機構と組み合わせます。従来のRAGのような単発の類似検索ではなく、問い合わせ内容を分析し、必要なデータ取得・推論の手順(回答計画)を生成します。例えば、システム開発プロジェクトで仕様変更の経緯を問い合わせる場合、以下のステップを通じて回答を生成します。

  • 関連する議事録を時系列で取得します。

  • 意思決定者の過去の発言やステークホルダーとの関係性を分析します。

  • 意思決定者の意向が変化した時点と変化の要因を抽出します。

これにより、情報の関係性や変化の流れを横断的に把握し、意思決定の背景を含めた分析が可能になります。

活用イメージ

本技術は、以下のような領域での活用が期待されています。

  • ニュース監視・インテリジェンス分析:継続的に流入するニュースやレポートから個別事象の関係性や変化の兆候を抽出し、将来的な変化やリスクの兆候を把握することに役立ちます。

  • 開発管理・議事録管理:要件定義から設計・開発に至るまでの議論や変更経緯を保持し、「なぜその仕様になったのか」「誰がどのような判断をしたのか」といった背景を踏まえた検索・回答を実現します。

  • ナレッジ継承:問い合わせ履歴や障害対応記録などから、過去の経緯・判断理由・対応状況を提示することで、知見の共有を促進し、引き継ぎの負荷軽減と安定した対応品質の実現に貢献します。

今後の予定

両社は今後、さらなる精度検証や実証を通じて「AI Memory RAG」の実用性を高め、それぞれのAIソリューションへの展開を目指します。

MRIでは、企業のインテリジェンス業務を支援するAIソリューション「インテリジェンス基盤」において、ニュース監視やナレッジマネジメント技術として本技術の活用を検討しています。

PKUTECHでは、開発管理・議事録管理・問い合わせ対応支援領域などのナレッジ管理技術としての実装を進め、PKUTECHが提供するAIエージェント基盤「Egeriaシリーズ」に「Egeria-AI Memory RAG」として搭載していく予定です。

両社は今後も、生成AIの業務活用高度化に向けた共同研究・技術開発を推進し、顧客の生産性向上と高度な意思決定支援に貢献していく方針です。

共同開発企業について

株式会社三菱総合研究所

  • 本社所在地: 東京都千代田区永田町二丁目10番3号

  • 代表者: 代表取締役 社長執行役員 籔田健二

  • 事業内容: シンクタンク・コンサルティングサービス、ITサービス

  • 設立: 1970年5月

PKUTECH株式会社

  • 本社所在地: 東京都千代田区神田西福田町3番地 RBM神田ビル7階

  • 代表者: 代表取締役社長 劉 甚秋

  • 事業内容: AI・データ分析、マルチクラウド基盤とセキュリティ、ローコード開発プラットフォーム

  • 設立: 2007年2月

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