マクニカとElith、国内初のEdge AIによる特殊詐欺電話検知PoCで90%超の精度を確認

テクノロジー

特殊詐欺被害の深刻化と新たな対策の必要性

近年、特殊詐欺の被害は深刻さを増しており、警察庁の発表によると、2025年には認知件数27,832件、被害額1,423.1億円といずれも過去最悪を記録しました。特殊詐欺の当初接触手段は約8割が電話であり、特に60代以上では固定電話を起点とする被害が多く発生しています。

総務省も、2026年7月には電気通信事業者に対し、AI等を活用した詐欺検知・警告サービスの周知・普及を含む、特殊詐欺被害防止対策の一層の強化を要請しています。

従来の迷惑電話対策は電話番号による判定が中心でしたが、手口の巧妙化に伴い、受電後の会話内容や会話の流れから詐欺の兆候を早期に検知する対策が求められています。しかし、クラウド上で音声を解析する構成では、音声データの外部送信によるプライバシーへの懸念や、サーバー・クラウド利用費などの運用負担が課題となっていました。そこで、マクニカとElithは、端末側でAI推論を行うEdge AIに着目し、今回のPoCを実施しました。

Edge AIによる特殊詐欺電話検知PoCの概要と成果

今回のPoCは、マクニカとElithが共同でAIモデルの開発から性能評価、エッジ環境への実装検証までを推進し、Broadcom社のNPU搭載PON MAC SoCを活用することで実現しました。両社のAI技術と通信インフラ領域の知見を組み合わせることで、リアルタイムな詐欺電話検知技術の実用化に向けた検証が進められています。

具体的には、USBスピーカーフォンなどを通じて入力された通話音声を、ホームゲートウェイ(光回線を使ったインターネットやひかり電話を利用する際に回線事業者から提供される、複数の機能を1台にまとめた機器)等を想定した評価環境の端末側でリアルタイムに解析し、会話内容や文脈から特殊詐欺の兆候を判定します。

PoCの処理フロー

本PoCでは、公開されている音声データを活用し、おれおれ詐欺、公的機関をかたる詐欺、コールセンター型詐欺など複数の特殊詐欺シナリオおよび一般会話シナリオを対象に評価を実施しました。その結果、本PoC用に構築した評価環境において90%以上の判定精度が確認されました。これにより、NPUを活用したEdge AIによって、通信機器上で通話中の詐欺リスクをリアルタイムに判定できる可能性が示されています。

なお、本結果はPoC環境における評価結果であり、実際の利用環境、通話品質、会話内容その他の条件により性能は異なる場合があります。

本ソリューションが持つ4つの特徴

NPU/Edge AIによるリアルタイム詐欺検知

クラウドではなく固定電話の接続先であるホームゲートウェイなどの端末側でEdge AIによる推論処理を行うことで、通話内容をリアルタイムに解析し、詐欺電話の兆候を検出します。AIの学習済みモデルによる推論処理に適したプロセッサであるNPUの活用により、高効率なAI推論を実現します。

音声データに対するプライバシー保護

クラウドAIでは音声データを外部サーバーへ送信する必要がありますが、本ソリューションでは端末内でAI処理を完結します。これにより、利用者のプライバシー保護や情報漏えいリスクの低減に寄与します。

クラウド利用料を抑えた低コスト運用

AI処理をエッジ側で推論処理を行うことで、音声解析をクラウドで実行する構成と比べ、サーバー利用料やクラウド運用コストを削減できます。これにより、通信事業者やサービス提供事業者にとって導入しやすい構成が実現します。

固定電話利用環境への適用を想定したPoC

ホームゲートウェイと固定電話の組み合わせを想定し、会話の文脈をEdge AIでリアルタイムに解析する詐欺検知技術の実現可能性を検証しました。電話番号情報を用いる従来の対策を補完し、受電後の会話内容から詐欺の兆候を捉える新たな対策への応用が期待されます。

今後の展望

マクニカとElithは、本PoCで得られた知見をもとに、評価シナリオの拡充やAIモデルの性能向上に取り組むとともに、通信事業者や通信機器メーカーとの連携を通じて、実際の利用環境を想定した検証を進めてまいります。

また、ホームゲートウェイをはじめとする通信機器への実装可能性や運用面での課題について検討を進め、特殊詐欺対策への活用を通じて、より安心・安全な通信環境の実現に貢献することを目指します。

補足情報

  • NPU(Neural Processing Unit)
    AIの学習済みモデルによる推論処理に適したプロセッサです。AI演算を効率的に実行し、端末側での高速かつ省電力な推論処理を支えます。

  • PON MAC SoC(Passive Optical Network Media Access Control System-on-Chip)
    光アクセスネットワーク(PON)の通信制御機能(MAC)などを1つの半導体チップに集積したSoCです。ホームゲートウェイや光回線終端装置などの通信機器に用いられます。

  • Edge AI(エッジAI)
    クラウドサーバーではなく、端末や通信機器などデータが発生する場所に近い機器上でAI処理を実行する技術です。リアルタイム性の向上、通信量の抑制、プライバシーへの配慮などが期待されます。

  • ホームゲートウェイ
    光回線を使ったインターネットやひかり電話を利用する際に、回線事業者から提供される複数の機能(ONU、ルーター、電話アダプターなど)を1台にまとめた機器です。

株式会社Elithについて

株式会社Elithは、AIセーフティ・セキュリティを土台に、企業向けAIプロダクトの開発と先端研究に取り組むテックカンパニーです。製造、金融、医療、社会インフラなど、重要な業務や意思決定を担う領域で、AIの品質、安全性、セキュリティ、ガバナンスを支えるプロダクトとサービスを提供しています。
会社概要URL:https://elith.ai

株式会社マクニカについて

マクニカは、半導体、サイバーセキュリティをコアとして、最新のテクノロジーをトータルに取り扱う、サービス・ソリューションカンパニーです。世界33か国/地域100拠点で事業を展開、50年以上の歴史の中で培った技術力とグローバルネットワークを活かし、AIやIoT、自動運転など最先端技術の発掘・提案・実装を手掛けています。
マクニカについて:http://www.macnica.co.jp

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