サンリオピューロランドV字回復の鍵は「対話の連鎖」
2026年4月10日、株式会社Livelyが主催する対談イベントシリーズ「Active Listening Talks(ALT)」の第3回が開催されました。今回は、株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長であり、サンリオピューロランド館長を務める小巻亜矢氏をゲストに迎え、「対話と『聴く』の社会的可能性」について深く掘り下げました。
サンリオピューロランドのV字回復を成し遂げた立役者として知られる小巻氏ですが、その秘訣は特別な戦略ではなく、一人ひとりの声に耳を傾け続ける「対話の連鎖」にあったと語りました。

Active Listening Talks(ALT)とは
「Active Listening Talks(ALT)」は、株式会社Livelyが主催する対談イベントシリーズです。「聴く」という行為を深く探求し、それが現代社会でどのように実践・活用されうるのかを考察することを目的としています。これまでにForbes JAPAN Web編集長の谷本有香氏や教育評論家の親野智可等氏がゲストとして登壇しており、今回は小巻亜矢氏が招かれました。
登壇者プロフィール
小巻 亜矢(こまき あや)氏

株式会社サンリオエンターテイメント代表取締役社長、サンリオピューロランド館長。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了後、1983年に株式会社サンリオに入社。結婚・出産を経て関連会社で仕事に復帰し、2014年にサンリオエンターテイメント顧問、2015年に同社取締役、2016年にサンリオピューロランド館長に就任。2019年6月より現職を務めています。対話と共感を重視した独自のマネジメント手法で、ピューロランドの業績をV字回復へと導きました。女性のキャリア支援や子宮頸がん予防啓発活動にも積極的に取り組んでいます。
岡 えり(おか えり)
株式会社Lively代表取締役。神奈川県立保健福祉大学卒業後、作業療法士として精神科や訪問リハビリの現場で活躍。3人の子育てと仕事の両立の難しさから専業主婦となりますが、子育てと両立できる働き方を模索し、個人対話セッションを開始。毎月100名以上との対話を通じて「人は話を聴いてもらうだけで元気になる」というコミュニケーションの価値を再認識し、「聴く」という新しい働き方の選択肢を創出すべく、2020年に株式会社Livelyを創業しました。オンライン傾聴サービス「LivelyTalk」の運営や、企業向けアクティブリスニング研修、採用・定着・エンゲージメント向上の伴走支援などを手掛けています。
イベントサマリー:対話が組織を変えるプロセス
対話が起点に
小巻氏は、サンリオピューロランドのV字回復は、自身だけが特別な秘策を持っていたわけではないと強調しました。赴任当初、社員の表情が下を向き、ハード・ソフト両面で課題が山積していた状況から始まったのは、一人ひとりの心に寄り添い、「何がやりたい?」「どうしたらいいと思うの?」と問いかける対話の繰り返しでした。この地道な対話が、皆で力を合わせる結果に繋がったと語られました。
視線が「下から上へ」変わった瞬間
組織改革の第一歩として小巻氏が実施したのは、部署の垣根を越えた「対話フェス」と呼ばれるワークショップでした。これは、設備、レストラン、商品、コスチューム、舞台など多様な職種の社員が、フォークダンス形式で相手を変えながら、自分の部署と「好きなもの」だけを名乗り合うというシンプルなものでした。
この取り組みを通じて、当初は視線を合わせようとしなかった社員たちが、少しずつ視線を「下から上へ」と動かすようになったと小巻氏は振り返ります。このささやかな変化が、トラブル発生時に声を掛け合うようになるなど、生産性の向上に繋がっていきました。

自分のご機嫌は自分で作るリーダーシップ
組織変革はリーダーシップ論にも及びました。小巻氏は「自分のご機嫌は自分で作るのも、リーダーの嗜みだと思う」と述べ、否定しない、多様な価値観を尊重する、面白がる、といった態度が組織の心理的安全性を築く土台になると語りました。現代の複雑で変化の激しい時代には、コマンド型ではなく、サーバント型のリーダーシップが求められるという見解が示されました。
「自分に対して傾聴していますか」── レベル3の傾聴へ
対談の後半で小巻氏は、参加者に対し「皆さん人に対しての傾聴は比較的頑張るが、自分に対して傾聴しているか」と問いかけました。傾聴には、相手の言葉を音として聞くレベル1、感情移入して巻き込まれるレベル2、そして相手・自分・周囲の空気まで全方位で聴くレベル3があると説明。レベル3の傾聴に到達するためには、まず聴く側自身が整っている必要があり、自分の中に存在する多様な「自分」を否定せずに気づくことが、他者を聴く力の前提になると語られました。
岡えり氏が見つめた「対話の連鎖の力」
Lively代表の岡えり氏は、専業主婦から起業に至る自身の道のりを語りました。当初は自信のなさから「私なんかと話さないでいい」と伝えてしまうこともあったという岡氏ですが、ある顧客の一言をきっかけに、対話の姿勢を根本から見直しました。カウンセリングやコーチングではなく、一人ひとりにまっすぐ向き合う対話を続けた結果、人がポジティブに変化していく場面を数多く経験したといいます。
また、Lively社が2022年に実施した「子育てで鍛えられた能力」に関するアンケートでは、「思いやり」「柔軟思考」「傾聴力」が上位を占めました。履歴書には書きにくいこれらの能力を社会で活かす場を創出することが、Livelyがアクティブリスニングを社会に広める理由であると述べられました。
参加者の声と「聴く」が求められる社会的背景
イベントにはシリーズ過去最多の参加者が集まり、登壇後のシェアタイムや質疑応答では、「1on1が恐怖になっている職場」「組織のどんよりした空気の変え方」といった具体的な現場課題に関する対話が活発に交わされました。
参加者からは次のような声が寄せられています。
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「岡さんの対話への思い、小巻さんのパッション、参加者との交流がとても楽しかったです。」
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「モヤモヤするのは業務内容以外にも心理的安全性がないこともあるなと再認識できた。」
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「立場上、役職が一番上の方が、様々な立場の職員と一対一で関係を繋ごうと、関わりを持とうとされておられた姿勢が印象的でした。」
現代社会では、人手不足、採用難、エンゲージメント低下、1on1の形骸化、管理職の疲弊など、多くの組織が複数の課題を同時に抱えています。AIによる業務効率化が進む一方で、「自分が何を望み、何に傷つき、どこに向かいたいのか」という自己認知の力、そしてそれを他者と共有する対話の力は、AI時代だからこそ個人と組織にとって付加価値として重要性が増しています。対話の文化を育むプロセスは、組織の規模や業種を問わず取り組めるものです。
Livelyの今後の展開とアクティブリスニングの社会実装
株式会社Livelyは、アクティブリスニングを起点に、個人のエンゲージメントと企業のウェルビーイングの両立を目指す伴走型パートナーです。対話の力をより多くの組織と個人に届けることを目指し、「アクティブリスニングの社会実装」に取り組んでいます。
Active Listening Talksは2026年も継続的に開催が予定されており、今後のゲストとして以下の氏名が発表されています。
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5月28日:白井智子氏(CHEERS株式会社CEO)
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6月10日:精神科医Tomy氏(SNSインフルエンサー/メンタルヘルス領域)
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7月7日:辻秀一先生(スポーツドクター/著書『スラムダンク勝利学』)
また、2026年4月29日には「アクティブリスニング協会」の「アクティブリスニング・アソシエイト認定講座(第1期)」が満席で開講され、6月28日(日)の第2期も募集が開始されています。
アクティブリスニングを組織に導入したい企業向けに、Livelyは以下のサービスを提供しています。
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アクティブリスニング研修:営業力向上、心理的安全性の醸成、チームビルディング、DEI推進、リーダー育成など、組織課題に応じた最適なプログラムを提案します。
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採用・定着・エンゲージメント向上の伴走支援:研修だけでは難しい、対話の文化を組織に根付かせる継続的なプロセスを伴走者としてサポートします。
これらのサービスに関するお問い合わせは、法人向けお問い合わせフォームから可能です。
株式会社Lively/LivelyTalkについて
株式会社Livelyは、「聴くコミュニケーションにチャンスをつくり、孤独を減らす」をパーパスに掲げ、メンタルウェルビーイング領域でサービスを展開しています。
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オンライン傾聴サービス「LivelyTalk」
話したい人と聴き手をつなぐプラットフォーム。サービス開始3年で全国から約1万人近くの聴き手応募があり、2025年にはサービスへのレビューが累計1,000件を超えました。 -
法人向けアクティブリスニング研修
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採用・定着・エンゲージメント向上の伴走支援
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アクティブリスニング協会 認定講座
個人がアクティブリスニングを体系的に学び、生活と仕事に活かすための6時間の認定プログラム。段階的な資格制度が設けられています。 -
聴く仕事ラボ:アクティブリスニングを仕事にしたい個人を支援するコミュニティ


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