インターネット上の偽・誤情報対策にC2PA技術が有効
近年、インターネット上では、精巧な偽・誤情報(フェイクニュースやフェイクコンテンツ)が容易に作成・拡散されるリスクが高まっています。特に災害発生時や選挙報道といった、社会的影響が大きい場面では、報道機関や防災情報を取り扱う企業にとって、大量に流通する画像や動画の真偽を迅速に確認し、正確な情報発信を行うことが喫緊の課題となっています。しかし、撮影場所や撮影時刻の特定といった裏取り作業には多大な時間とコストを要し、迅速な情報発信との両立が難しい状況でした。
このような背景のもと、NTTドコモビジネス株式会社、株式会社NTTドコモ、株式会社Specteeの3社は、総務省が実施する「インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業」の一環として、情報の真正性を可視化する国際的な技術標準規格であるC2PA技術を活用した偽・誤情報対策の実証実験を実施しました。この実証実験では、コンテンツの真正性を可視化することで、報道・防災分野におけるファクトチェック業務の効率化と、偽・誤情報の検知精度向上を目指しました。
実証実験で活用された3つの技術
本実証実験では、コンテンツが生成される時点での予防的対処を目的として、以下の3つの偽・誤情報対策技術が開発・活用されました。
-
メタデータの真正性チェック技術
スマートフォンのGPS情報だけでなく、複数の情報源を組み合わせて検証を行うことで、撮影された場所、時間、および使用されたデバイスの真正性を確認する技術です。 -
C2PA準拠の署名付与技術
真正性が確認されたメタデータを、C2PAに準拠した形式でコンテンツに付与します。これにより、コンテンツの改ざんを検知し、その来歴を追跡することが可能になります。 -
真正性検証ツール
付与された署名やメタデータを、検証者が視覚的かつ効率的に確認できるツールです。これにより、真偽確認にかかる負担が軽減されます。
報道・防災分野を想定した検証
実証実験では、報道・防災分野での業務活用を想定し、特に選挙報道や災害発生時など、偽・誤情報が社会に大きな影響を及ぼしやすい場面を対象に検証が行われました。C2PA技術を用いて、撮影時点からコンテンツの来歴情報を付与・管理し、その真正性を報道・防災業務担当者が容易に確認できる環境を構築。複数のシナリオに基づいてコンテンツ検証プロセスの有効性を確認しました。
具体的には、疑似的な選挙演説を想定したシナリオで、真正性が担保された素材とAI等により改変された素材を混在させ、検証ツールを用いた真偽確認を行いました。また、土砂崩れ等の疑似的な自然災害を想定した素材を対象に、SNS等での流通を想定した情報確認フローの検証も実施されました。
各社の役割と実証成果
本実証実験には、NTTドコモビジネス、ドコモ、Spectee、そして株式会社テレビ朝日が協力しました。各社の主な役割は以下の通りです。
-
NTTドコモビジネス: 総務省実証事業全体の企画、参画各社の連携調整、プロジェクト全体の統括を担当しました。
-
ドコモ: C2PAに準拠したコンテンツ真正性担保技術の提供、技術検証、および有効性評価を担当しました。
-
Spectee: 防災テック企業としての知見を活かし、災害関連画像コンテンツの真正性確認を担当しました。
-
テレビ朝日: 報道機関の立場から、ニュース制作・配信の実務に即した実証への協力、および画像コンテンツを中心とした真正性確認プロセスの検証を行いました。
実証の結果、以下の改善効果が確認されました。
-
ファクトチェック業務の効率化
コンテンツに付与されたメタデータの真正性が可視化されたことで、撮影場所や撮影時刻等に関する裏取り調査に要する時間が15%以上短縮され、ファクトチェック業務の効率化が確認されました。 -
偽・誤情報の検知精度向上
目視では判別が困難な精巧な加工や改ざんが施されたコンテンツについても、真正性検証技術を活用することで、正確に識別できる割合が85%を超える結果が確認されました。
これらの成果は、災害発生時など限られた時間の中で誤りのない情報提供が求められる場面において、迅速かつ正確な情報発信を支援できる可能性を示唆しています。
今後の展開
今回開発された偽・誤情報対策技術は、スマートフォンの機能としての搭載や、報道・メディア業界向けのツール提供を見据え、社会実装に向けた検討が進められます。また、選挙報道や災害対応分野に留まらず、保険業界や個人間取引など、情報の信頼性が特に重要となる幅広い分野への展開も目指されています。
参考情報
-
インターネット上の偽・誤情報等への対策技術の開発・実証事業(令和7年度): https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/taisakugijutsu_fy2025.html
-
NTTドコモビジネス株式会社について: https://www.ntt.com/about-us/nttdocomobusiness.html
※C2PA (Coalition for Content Provenance and Authenticity)とは、デジタルコンテンツの来歴や加工履歴を証明するための技術標準を策定する国際的な団体および、その標準規格の総称です。
※メタデータとは、画像や動画などのデジタルコンテンツに付随する、撮影日時、撮影場所、使用したデバイス情報などの属性情報のことです。


コメント