インバウンドサミット2026開催、AIが変える観光の未来を議論
2026年3月4日、東京ビッグサイトにて日本最大級のインバウンド観光カンファレンス「インバウンドサミット2026」が開催されました。このイベントでは、グローバルオンライン旅行サービスプロバイダーのTrip.comが参加し、代表取締役社長の高田智之氏がトークセッションに登壇しました。

トークセッションのテーマは「AIによるインバウンド観光の変革」。高田氏のほか、自由民主党 経済産業部会長の小林史明氏、福井県観光連盟 観光地域づくりマネージャーの佐竹正範氏、アソビュー代表執行役員CEO 代表取締役の山野智久氏が登壇し、日本のインバウンド市場の現状やAI活用の進展、地方観光の持続的成長に向けた重要性などについて活発な議論が交わされました。
登壇者プロフィール

高田智之氏(Trip.com International Travel Japan 代表取締役)
徳島県徳島市出身。ホテル業界での経験を経て、2023年よりTrip.com International Travel Japanの代表取締役社長に就任。

小林 史明氏(衆議院議員 自由民主党 経済産業部会長)
「テクノロジーの社会実装による多様でフェアな社会の実現」を政治信条とし、規制改革やデジタル化、スタートアップ支援などに従事。

佐竹 正範氏(福井県観光連盟 観光地域づくりマネージャー)
ヤフーでの経験後、DMO立ち上げやCMOを担当。2021年より福井県観光連盟で観光DX・データ駆動型マーケティングを推進。

山野 智久氏(アソビュー代表執行役員CEO 代表取締役)
2011年にアソビュー株式会社を創業。「遊びの予約サイト アソビュー!」や観光施設向けSaaSを展開。
日本の観光市場の現状とAI活用の重要性
日本のインバウンド市場は、世界的に高い人気を維持しており、引き続き強い需要が見られます。しかし、旅行先の選択肢が広がっている中で、リピーター層の旅行動向には変化が生じています。持続的に日本が魅力的な旅行先であり続けるためには、新しい体験や選択肢を提供し続けることが重要であると高田氏は述べました。
自由民主党経済産業部会長の小林史明氏は、人口減少が進む日本において、生産性向上と付加価値向上は不可欠であり、その手段の一つとしてAIの活用が挙げられると指摘しました。観光政策も「人数を増やす」から「消費額を増やす」質重視へとシフトしており、AIによるデータ活用は観光客を地方へ分散させる上でも重要であると強調しました。
福井県観光連盟の佐竹正範氏は、観光分野でのAI活用には「観光地の基本データ」と「観光客の志向データ」をAIが活用できる形に整理することが重要であると説明しました。実際にデータを可視化することで、宿泊事業者の売上向上や道の駅での廃棄ロス削減、行政の業務効率化につながる事例も報告されています。
Trip.comのAI旅行アシスタント「TripGenie」の驚くべき成果
Trip.comのAI旅行アシスタント「TripGenie」は、AIを活用した旅行予約数が前年比で約400%増加という目覚ましい成果を上げています。特に香港、シンガポール、マレーシア、イタリア、フランスといった国や地域の旅行者が、AIを積極的に利用しているとのことです。
「TripGenie」のホテル比較機能は、予約までのクリック数を約80%削減し、ユーザーの利便性を大幅に向上させています。また、AIへの7日以内の再訪率も45%増加しており、旅行前や旅行後の相談にもAIが約4分の1を占めるなど、単なる検索ツールを超えた「旅のコンパニオン」として、旅行体験全体をサポートする存在へと進化していることが示されました。
アソビューの山野智久氏は、オンライン旅行代理店(OTA)のビジネスにおいて、消費者向けのB2C領域ではChatGPTやGeminiなどのAIと正面から競争し、これまでの購買データを活用していくことが重要であると述べました。一方で、事業者向けのB2B領域では、契約や運用、サポートなど人の関与が重要な部分を強化し、差別化を図ることがポイントであると指摘しました。
地方観光におけるAI活用とデータ収集の重要性
AIによる購買予測や分析が可能になる一方で、地域での新たな高付加価値観光商品の創出やビジネス実装には、人材や取り組みが不可欠です。佐竹氏は、AI活用以前に、まずは観光データをしっかりと集めて活用することが重要であると強調しました。福井県では、県内約105エリアにQRコードを設置して観光客のアンケートを収集し、現在約9万件のデータを蓄積しオープンデータとして公開しています。これにより、エリアごとの満足度を可視化し、地域の改善につなげることで、実際に満足度向上を実現しているとのことです。AIは、こうしたデータをさらに分析し、課題発見や改善を効率化する段階にあると考えられています。
また、AIによるレコメンドが進むと、人気の観光地への集中が進む可能性も指摘されています。これに対し高田氏は、ビジネスの観点では人気都市への集中が収益に繋がりやすいとしつつも、インバウンド産業全体で考えるとそれだけでは限界があると述べました。地方には魅力的な宿や体験が多くあるにもかかわらず、プラットフォーム上に情報が少ないケースがあるため、全国の宿泊施設との契約を増やし、地域のコンテンツをデータとして可視化する取り組みを継続していくことで、地方の選択肢を増やし、観光の分散と市場全体の成長に繋がるとの見解を示しました。
AIと観光の未来、そして人の役割
AIは今後、観光業界に多岐にわたるポジティブな変化をもたらすことが期待されています。技術の進化により、旅行者はこれまで以上に容易に旅行先を発見し、個人の興味関心に合った旅行を計画できるようになるでしょう。
Trip.comの高田氏は、若年層を中心に公共交通機関を利用した移動が増え、訪日旅行者の多くが車に依存しない形で観光を楽しむ傾向にあると指摘しました。また、イベントや文化体験、ファン活動など、明確な目的をきっかけに旅行をする人が増加しており、旅行はよりパーソナルで目的志向のものへと進化していると述べました。AIやデジタル技術は、パーソナライズされた旅行提案やレコメンデーションを通じて、こうした変化をさらに後押しし、新たな旅のきっかけを提供すると考えられています。
福井県観光連盟の佐竹氏は、地域事業者の「稼ぐ力」をデータで支援する中で、一部は自動化できるようになってきたと語る一方で、AIでは対応できない地域の現場調整や体験作りは、やはり人の力でしか実現できず、そこが差別化のポイントになると強調しました。
自由民主党経済産業部会長の小林氏も、推し活旅行や日本式ネイル・エステ、地域の空手道場や漁港体験など、まだインバウンドで活かしきれていない地域や文化の資産が豊富にあることに言及しました。AIが自動で点と点をつなぎ合わせてくれる時代は大きなチャンスであるとしながらも、現場の調整やコミュニティとの信頼関係は人の力でしか築けないものであり、地域や人に対する「愛」が試される場であると締めくくりました。
観光業界全体で新しい仕組みやアイデアを模索しながら、AIと人の協調によって、これからの時代にふさわしい新しい観光の形が創造されていくことでしょう。
Trip.comについて
Trip.comは、39の国と地域の24言語および35の現地通貨に対応した国際的なワンストップトラベルサービスプロバイダーです。世界220の国と地域にある150万軒以上のホテルと、3,400の空港を発着する640社以上の航空会社のフライト、そして20万以上のアトラクションや現地ツアー商品を網羅した巨大なネットワークを有しています。
URL: https://jp.trip.com
航空券検索: https://jp.trip.com/flights/
ホテル検索: https://jp.trip.com/hotels/


コメント