孤独・孤立は社会全体の課題
孤独・孤立は、個人の問題にとどまらず、社会全体で取り組むべき喫緊の課題となっています。実際に、孤独が慢性化すると、うつ病のリスク増加や免疫機能の低下を招き、死亡リスクを最大26%高めるという研究結果も報告されています(Holt-Lunstad et al., 2015)。
国は2024年に「孤独・孤立対策推進法」を施行し、24時間相談対応やアウトリーチ型の伴走支援、官民連携モデルの構築を重点計画に盛り込みました。しかし、既存の相談窓口の多くは「高齢者」「障害者」「子育て世代」など属性別に設計されており、20〜40代の働く世代やケアラーなど、どの属性にも当てはまらない人々が支援の網からこぼれ落ちやすいという現状があります。
埼玉県の実態調査では、県民の3割以上が孤独を感じていることが明らかになっています。特に若年・現役世代でその傾向が強く、20代では9.5%が「孤独感がしばしばある・常にある」と回答し、全年代で最も高い割合を示しています。さいたま市は、若年・現役世代が多い都市構造であるため、転居や長時間労働による人間関係の希薄化が孤独のリスクを高めやすい環境にあります。今回の実証実験は、このような「空白地帯」を埋めるための重要な一歩と位置づけられています。
実証実験の概要
「さいたま市聴いてAI」の実証実験は、以下の内容で実施されます。
| 名称 | さいたま市聴いてAI(傾聴AIチャット相談窓口) |
|---|---|
| 期間 | 2026年3月5日(木)〜6月4日(木) |
| 対象 | さいたま市在住・在勤・在学の方 |
| 利用方法 | スマートフォンやPCのブラウザから利用可能(24時間対応) |
| 連携協定締結日 | 2026年3月5日 |
| KPI | 相談数・コーディネーション数(AI→自治体への連携数) |
「聴いてAI」の主な特徴
この傾聴AIチャット相談窓口には、3つの主要な特徴があります。
1. 心理学の標準尺度で実証済み「ネガティブ感情を約22%低減する傾聴アルゴリズム」
「聴いてAI」の中核をなすのは、株式会社ZIAIが独自開発した傾聴・共感アルゴリズムです。心理学の標準的な感情測定尺度を用いた検証により、利用後にユーザーのネガティブ感情が約22%低減することが確認されています。このAIは「答えを出す」ことよりも「聴くこと」を優先して設計されており、利用者が自身のペースで感情や考えを表現できる場を提供します。
2. 24時間365日、スマートフォン一つで。時間的・心理的障壁をゼロに
電話相談に抵抗がある若者世代や、深夜しか時間が取れない介護者、共働き世帯など、既存の相談窓口の対応時間や形式によって支援から遠ざかっていた層が、いつでもどこでもテキストで相談できる環境が整備されます。これにより、一人で抱え込みがちな人々が「誰かに話す」最初の一歩を踏み出しやすくなることが期待されます。
3. AIで終わらせない。本人同意のもとで行政と連携する「伴走支援モデル」
「聴いてAI」は、単に相談を聴くだけで終わりません。利用者が希望した場合、本人の同意を得た上で必要な情報をさいたま市の担当者と連携し、継続的な伴走支援へと繋げる仕組みが実装されています。このモデルは、AIを「入口」とし、行政を「出口」として機能させることで、国が推進する「アウトリーチ型支援」と「官民連携プラットフォーム」の理念を具体的に実現するものです。
株式会社ZIAIについて
株式会社ZIAIは、テクノロジーを通じて新たな「傾聴体験」の創造に取り組むヘルスケアスタートアップです。もともと自殺対策を目的とした非営利のAI研究機関として設立され、その後、そこで培われた「傾聴AIアルゴリズム」を社会実装するために事業会社としてスピンアウトしました。
現代社会における個人の悩みの複雑化・多様化、メンタルヘルス懸念の増大、そして悩みを打ち明けられる場所や聴いてくれる存在の不足といった課題に対し、ZIAIは一次予防の重要性を訴えています。同社は、2030年までに、住む場所や年齢、経済状況に関わらず、誰もがいつでもどこでも悩みを相談でき、必要に応じて適切な情報や機関、専門家につながることができる社会の実現を目指しています。
-
ZIAI公式ウェブサイト:https://ziai.io/


コメント