ナショナル・シアター・ライブ『ハムレット』続映記念トークイベントが開催、作品の深い魅力と考察の楽しさを解説

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新たな『ハムレット』像を深く掘り下げる

イベントには、本作の劇場プログラムにコラムを寄稿した英文学者・翻訳家の河合祥一郎氏と、明治大学でシェイクスピアプロジェクトに長年携わる井上優氏が登壇しました。本編を鑑賞した観客に向けて、作品の見どころや魅力が語られました。

講演会風景

演劇界で数多く上演されてきた『ハムレット』は、時代とともにその姿を変え、常に人々を魅了してきました。今回、イギリスのナショナル・シアターが数十年ぶりに手掛けた『ハムレット』は、これまでにない等身大の青年ハムレットが主人公として描かれています。

トークイベントは盛況のうちに進行しました。井上氏は本作を「良い意味で変化球なハムレット」と表現。河合氏は、業界紙で評価が高いというオフィーリア役のフランチェスカ・ミルズの演技に納得しつつも、主演のヒラン・アベイセケラの演技について「涙しながら笑いも誘う演技が個人的には良かった。英雄的なハムレットというより、私たちに近いロマン派のハムレット像になっていた」と称賛しました。

考察を深める楽しさ

作中に登場する若者らしいハムレットが着るブロックバスタービデオのロゴ入りシャツについて、イーサン・ホーク主演の『ハムレット』へのオマージュであったことや、天使の羽をつけて登場するオフィーリアがバズ・ラーマン監督の『ロミオとジュリエット』のジュリエットの衣装を彷彿とさせることなど、演出家が様々な要素をオマージュ的に盛り込んだのでは、といった推測が披露されました。観客は、このような点を含めて鑑賞する楽しさを知ることができたでしょう。

井上氏によると、この作品は「考察をしたくなる『ハムレット』」だといいます。例えば、ハムレットがポローニアスを殺す際のピストルが本物ではなく手の鉄砲であったシーンについて井上氏が「あれはなんでなのか、わからない」と述べると、河合氏は「シェイクスピアの作品はリアリティと虚構がある意味織り混ざっていく世界で、それがシェイクスピア作品の売りだったりもする」と、『マクベス』の「心の短剣」のセリフに言及しつつ独自の解釈を展開しました。このように、従来の『ハムレット』とは異なるポイントがいくつか取り上げられ、多くの「なぜ?」に対して様々な解釈の仕方が示され、正解がないからこその楽しみ方が伝えられました。

講演会場の様子

考察をしたくなる本作は、観れば観るほど、また原作を読むなどして知れば知るほど、様々なポイントに思いを巡らせることができると、井上氏からはリピート鑑賞も推奨されました。

続映と第二弾トークイベントのお知らせ

『ハムレット』はTOHOシネマズ シャンテで続映が決定しており、3月7日(土)には第二弾トークイベントが開催されます。ゲストには松岡和子氏と柏木しょうこ氏が登壇する予定です。この機会に、ぜひ劇場で作品をお楽しみください。

詳細情報

登壇者プロフィール

河合祥一郎
英文学者・翻訳家。東京大学およびケンブリッジ大学にて博士号を取得。著書に『ハムレットは太っていた!』(第23回 サントリー学芸賞受賞)、『シェイクスピアの正体』ほか多数。2014年に立ち上げた「Kawai Project」では海外戯曲の新訳・演出を担当。今春、長年勤めあげた東京大学の教授職を退官。

井上優
明治大学文学部教授。演劇理論、西洋演劇史研究が専門。近年は岩田豊雄の業績の再評価、近代日本におけるシェイクスピア移入史などを主に研究対象としています。明治大学のシェイクスピア上演(明治大学シェイクスピア・プロジェクト)をコーディネイターとして統括・指導。国際演劇評論家協会日本センター会員。日本演劇学会理事。

松岡和子
翻訳家、演劇評論家、東京医科歯科(科学)大学名誉教授。1995年からシェイクスピア劇の翻訳に取り組み、2021年に全戯曲の個人訳による『シェイクスピア全集』(筑摩書房ちくま文庫)を完結。その功績により菊池寛賞、朝日賞などを受賞。主な著書に『すべての季節のシェイクスピア』『深読みシェイクスピア』他。

柏木しょうこ
映像・英米文学翻訳家。演劇界から翻訳家へ転身。映像(字幕・吹き替え)、書籍、絵本、戯曲など多様な翻訳を手掛ける。ドラマ「ブレイキング・バッド」(字幕)、映画「マクベス」をはじめ、NTライブではシェイクスピア作品のほか、『ライフ・オブ・パイ』、『インナー・エイリア』『ウォレン夫人の職業』など数多くの作品の字幕翻訳および字幕監修に携わる。

『ハムレット』作品概要

NTLive大ヒット作『ライフ・オブ・パイ』でオリヴィエ賞を受賞したヒラン・アベイセケラがシェイクスピア作品に挑みます。

  • : ウィリアム・シェイクスピア

  • 演出: ロバート・ヘイスティ

  • 上映時間: 約2時間52分

  • 出演: ヒラン・アベイセケラ(NTLive『ライフ・オブ・パイ』)

  • ストーリー: 義務と疑念の狭間で揺れる若き王子ハムレット。権力と特権に囲まれながら、彼は「生きるべきか、死ぬべきか」という究極の問いに挑みます。

舞台の一場面

第二弾トークイベント概要

  • 日時: 3月7日(土)10:00〜上映回の本編上映後に実施(本編鑑賞者がトークイベントを観覧できます)

  • 場所: TOHOシネマズ シャンテ

  • ゲスト登壇者: 松岡和子氏、柏木しょうこ氏(敬称略)

  • 座席売り出しスケジュール: 3月4日(水)24:00〜(=3月5日(木)0時〜)

舞台の一場面

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