映画×食×ワインが五感を刺激する「ショートフィルムペアリングレストラン」開催レポート
ショートフィルム専門オンラインシアター「ブリリアショートショートシアターオンライン(BSSTO)」は、開設8周年を記念し、五感で物語を体験する新感覚イベント「Future Stories on the Table ~ショートフィルム・ペアリング・レストラン~」を開催しました。このイベントでは、映画、食、ワインが共鳴し、「再生(リジェネラティブ)」をテーマにした物語が展開されました。
イベントには、ショートショート フィルムフェスティバル & アジアのアンバサダーであるLiLiCo氏、東京・八重洲のイノベーティブ・キッチン「8go(エゴ)」を率いるミシュラン一ツ星・グリーンスターシェフの野田達也氏、そしてサステナブルなワイン造りを実践する「トーレス」のジル・セラ氏が登壇しました。

五感で味わう未来の物語
イベントでは、ショートフィルム1作品ごとに、そのテーマに連動する食事とワインが提供され、参加者はペアリングを楽しみながら、地球と自身の未来について考える一夜を過ごしました。
第1部: 失われた光と再生
最初に上映されたのは、太陽の光が失われた世界を描いたショートフィルム『日の光に包まれて』でした。LiLiCo氏は、「ミラーボールが人生のありがたみを照らす演出に驚きました。最後に少女がこちらを見つめるシーンは、地球のために何ができるのかという問いかけ」と、作品の強いメッセージ性に感銘を受けた様子でした。
この世界観に合わせて提供されたのは、野田シェフによる「大都市のシーザーサラダ」です。水光栽培のレタスや、野菜の端材を再利用したシートが使われており、野田シェフは「どんな環境下でも食を未来に繋ぐ、再生(リジェネラティブ)への解決策。本来の素材が持つ力強い味を、一歩立ち止まって感じてほしい」と、料理に込められた意図を語りました。

ペアリングされたワインは、1980年代から持続可能なワイン造りに注力し、再生型農業を実践するトーレス社の「サングレ・デ・トロ・ブランコ」でした。フローラルな香りと力強い酸が、料理に寄り添う味わいを生み出しました。
第2部:野生との共存と、古来品種の復興
2本目のショートフィルムは、カナダの極夜の街に現れるホッキョクグマを捉えたドキュメンタリー『Nuisance Bear(迷惑なクマ)』です。LiLiCo氏は、「人間と動物、どちらがどちらの場所にお邪魔しているのか。スマホを向けられるクマの違和感は、現代の私たち自身の姿にも重なる」と、共存の難しさについて語りました。
これに合わせた料理は、NTTが森林保全と地域活性の過程で最新のアグリテックを活用し育てた椎茸を使った「椎茸の一口グラタン」です。豆乳グラタンソースで仕上げられた一皿に、LiLiCo氏は「乳製品アレルギーのある家族も安心して食べられる。素材の味が凝縮されている」と絶賛しました。野田シェフは「ただ消費するのではなく、循環に繋がる食材の選択肢を問いかける一皿」と説明しました。

ペアリングワインは、トーレス社の「クロ・アンセストラル」です。ジル・セラ氏は「気候変動に対応するため、40年前から復興に取り組んできたスペインの古来品種『モネウ』を使用している。少し冷やして味わうことで、複雑さとフレッシュさが際立つ」と解説しました。野田シェフも「若い土を思わせる余韻が、キノコの風味と完璧なアリアンス(結婚)を見せている」と、その相性に感銘を受けていました。
第3部:海の神秘と「ゴミ」から生まれる価値
最後を飾ったのは、海洋生物と機械が融合したアニメーション『Hybrids(ハイブリッド)』です。LiLiCo氏は「神秘的な海の世界の先に、人間が出したゴミというラスボスがいるような感覚」と、作品が放つ環境への警鐘を鋭く受け止めました。
料理は、キャビア採取後に廃棄されがちな魚体に着目した「森のチョウザメ」です。野田シェフは「フードロスをなくし、命をありがたく頂くための挑戦」と語りました。添えられた小松菜についても、江戸川区発祥の野菜と東京の地産地消を守る高倉農園の情熱が伝えられました。

合わせたワインは、エメラルド色に輝く「ヴィーニャ・エスメラルダ」です。ジル・セラ氏は「マスカットの華やかな香りと、スパイシーな料理にも負けない絶妙な甘さと酸のバランスを楽しんでほしい」と紹介しました。LiLiCo氏は「鼻からブドウが抜けるようなジャスミンの香り。危ないくらい進んでしまう」と、その魅惑的な味わいに酔いしれました。
終幕:一期一会の「ゴミのスープ」と未来への責任
イベントの締めくくりには、8goの象徴的なメニューである「ゴミのスープ」が振る舞われました。野菜の切れ端を乾燥させ、水で煮出し、塩のみで味を引き立てたこのスープを、ジル・セラ氏は「驚くほど複雑で素晴らしい価値の昇華」と称賛しました。

野田シェフは「かつては理解されなかったが、今は皆さんの意識が変わり、価値を感じてもらえるようになった。料理を通して時代の変化を感じる」と感慨深く語りました。
最後に、ジル・セラ氏は「何を選び、何を消費するかが次の世代への責任」と述べ、LiLiCo氏は「一歩足を運んだ先に幸せがある。今日が未来を考えるきっかけになれば」と締めくくりました。
ショートフィルム、食、ワインという3つの要素が「リジェネラティブ(再生)」という一本の線でつながり、参加者の心に深い余韻を残す一夜となりました。
イベントで上映された作品や提供された食事、ワインの詳細については、以下のページで紹介されています。
ブリリアショートショートシアターオンラインについて
「ブリリアショートショートシアターオンライン(BSSTO)」は、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」が厳選したショートフィルムを毎週水曜日に配信しているオンラインシアターです。簡単な会員登録で、常時12作品ほどを無料で視聴できます。2018年2月にスタートし、映画を通して豊かな人生のヒントや、暮らしに取り入れるアイデアを発信しています。
登壇ゲスト
- LiLiCo氏

1970年スウェーデン・ストックホルム生まれ。18歳で来日し、1989年から芸能活動を開始。TBS「王様のブランチ」の映画コメンテーターをはじめ、J-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」など多数の番組に出演。アニメの声優、ナレーション、俳優など多岐にわたり活躍しています。
- 野田達也氏

1985年福岡県生まれ。半導体エンジニアから料理人へと転身。都内フレンチレストランやミシュラン二つ星レストランでの研鑽を経て、日本橋・馬喰町の「nôl(ノル)」でミシュラン一つ星を5年連続、ミシュラングリーンスターを3年連続で獲得。2025年からはGIC Tokyoのアドバイザー、Innovative Kitchen 8go(エゴ)のディレクターに就任し、食と医療、アート、テクノロジーなど多分野を横断した活動を展開しています。
- ジル・セラ氏

バルセロナ(スペイン)出身で、ワイン業界での経験は15年以上。過去約10年間アジアに在住し、カタルーニャ工科大学卒業のエンジニアでもあります。グローバル・マーケティングの学位や経営学修士号を持ち、スペインワインエデュケーターの資格、WSETレベル3を取得しています。
8go(エゴ)について

東京・八重洲に位置する「8go(エゴ)」は、「リジェネラティブ(再生)」をコンセプトに掲げるイノベーティブ・キッチンです。環境や社会にとってより良い行動を促し、再生を促進することを目標としています。美味しく、楽しく「食」を通じてこの課題を伝え、小さな行動変容のきっかけ作りを目指しています。


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