IOWN APNと画像認識AIが約300km離れた工場での外観検査を成功、ローカル環境同水準の検査時間を達成

テクノロジー

背景にある製造業の課題

製造業の現場では、熟練工の減少や製品の多様化に伴い、外観検査の高度化と効率化が喫緊の課題となっています。特に複数の工場を持つ企業では、工場ごとの検査品質のばらつきや、人手に依存することによる運用負荷が大きな問題です。

高精度なAI外観検査を導入するためには、各工場にAI基盤やサーバーを設置・運用する必要があり、これには多大な設備投資や保守運用コストが発生します。また、工場外のデータセンターを利用する場合、従来のネットワークでは遅延や通信のゆらぎが生じやすく、リアルタイム制御を伴う工程でのAI活用は困難でした。

こうした課題に対し、3社はIOWN APNの特長に着目し、工場外のデータセンターに画像解析可能なAI基盤を集約する遠隔からのAI外観検査の有効性を検証しました。

共同実験の概要と成果

本共同実験では、NTT株式会社の支援のもと、約300km離れた関東の日東工業データセンターと静岡県の掛川工場間をIOWN APNで接続し、以下のプロセスで画像データおよびAI外観検査結果の伝送を実施しました。

本取り組みのイメージ図

  1. 画像データ伝送によるAI判定: 掛川工場のベルトコンベア上を流れる製品をラインカメラで撮影し、画像をデータセンターへ伝送。画像認識AI「Deeptector®」により不具合箇所・種類をリアルタイムで特定しました。
  2. AI外観検査結果データの伝送とロボット制御: Deeptector®によるAI外観検査の結果に基づき、不具合の有無と不具合箇所の座標データを掛川工場のロボットに伝送。リアルタイムにロボットを制御し、不具合箇所へシールの貼付を実施しました。

評価結果

この取り組みの結果、ローカル環境と遜色ない速度・品質で画像データの解析およびロボットアームの制御が実証されました。

  • 画像認識AIを工場外のデータセンターに設置しても、ネットワークの遅延時間が日東工業の外観検査要件に影響を与えないことが確認されました。

  • AI外観検査を導入することで、判定基準に合致しないパーツや製品が流れた場合のみ目視確認を実施することが可能となり、検査員の負担軽減に効果があるデータが得られました。

  • IOWN APNにより、遠隔の監視運用拠点に工場内データとAI基盤を集約できるため、監視運用拠点から工場内の設備状況や外観検査結果の確認、システム運用が可能になることが示され、運用効率化および複数工場の検査品質統一化に資するデータが得られました。

各社の役割

本取り組みにおける各社の役割は以下の通りです。

  • 日東工業: 実証フィールドとなる掛川工場およびデータセンター環境の提供、光反射に強く細かな傷が撮像可能なラインカメラの選定、遠隔からのAI外観検査およびロボットアームによるシール貼付工程の外観検査要件を踏まえた評価を担当しました。

  • NTT西日本: 「All-Photonics Connect powered by IOWN」の提供、県内接続のIOWN APN構成検討を担当しました。

  • NTTドコモビジネス: 「docomo business APN Plus powered by IOWN」の提供、県間接続のIOWN APN構成検討を担当しました。

今後の展望

日東工業、NTT西日本、NTTドコモビジネスの3社は、今回の実証で得られた知見を基に、AI外観検査の対象を複数の製品へ拡大し、工場全体のさらなる効率化を進めていく方針です。今後も連携を強化し、IOWN APNを活用したAI外観検査の実生産ラインへの適用を目指します。

関連情報

  • IOWN構想: あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、光を中心とした革新的技術を活用し、高速・大容量通信ならびに膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想です。

  • APN(All-Photonics Network): IOWNを構成する主要な技術分野の1つとして、端末からネットワークまで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入した次世代ネットワークです。エンド・ツー・エンドでの光波長パスを提供する波長ネットワークにより、圧倒的な低消費電力、高速大容量、低遅延伝送の実現を目指すものです。

  • 日東工業の掛川工場: https://www.nito.co.jp/company/domestic/kakegawa/

  • Deeptector®: NTTドコモソリューションズ株式会社の登録商標である画像認識AIです。

  • Rei Rack: 日東工業が提供する、高発熱IT機器を冷却可能なクーラー実装型サーバラックです。本取り組みにおいて、APN装置等の通信機器を収容しました。

  • All-Photonics Connect powered by IOWN: NTT西日本が提供する、世界最高水準となる最大800Gbpsのユーザー拠点間帯域保証型通信サービスです。

  • docomo business APN Plus powered by IOWN: NTTドコモビジネスが提供する、IOWN構想に基づきAPN技術を取り入れた大容量・低遅延・ゆらぎのないネットワークサービスです。

  • 本共同実験で確認された成果は、2025年11月19日~26日にNTT武蔵野研究開発センタで開催された「R&Dフォーラム2025」の「IOWN×スマートファクトリー」展示ブースで紹介されました。

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