マクニカとリラタ社、CO2排出量大幅削減の栽培培地「SmartSoil」の社会実装へ
2026年6月29日、株式会社マクニカは、カナダのLyrata Inc.(リラタ社)と、環境負荷を低減した生物由来の再利用可能な栽培培地「SmartSoil(スマートソイル)」の日本国内における社会実装推進および将来的な協業に向けた覚書(MOU)を締結したことを発表しました。この提携により、CO2排出量を最大65分の1に削減できる画期的な栽培培地の普及が期待されます。

カナダ大使館でのMOU締結式の様子。写真左から:在日カナダ大使館公使(商務)ルイ・ピエール・エモン氏、リラタ社 CEO アドナン・シャリフ氏、マクニカ テクスター カンパニー プレジデント 後藤 正信
環境制御型農業における課題と「SmartSoil」の可能性
近年、気候変動や農業従事者の減少、食料供給の安定性といった社会課題が深刻化する中で、栽培要因を精密に制御し、収量向上を目指す環境制御型農業への注目が高まっています。しかし、環境制御型農業で広く用いられる水耕栽培などでは、培地にウレタンやロックウールといった資材が多く採用されており、これらの資材はその製造から廃棄に至るライフサイクル全体で大量のCO2を排出することが課題とされていました。
日本政府は2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロを目標に掲げ、2030年度には2013年度比46%削減、さらに2035年度には60%削減という国際公約を設定しています。また、2026年からは年間CO2排出量10万トン以上の法人を対象とした排出量取引制度も本格導入されるため、企業には排出量削減への対応が強く求められています。このような背景から、環境制御型農業においても環境負荷の軽減が喫緊の課題となっています。
「SmartSoil」の革新的な技術
リラタ社が開発した「SmartSoil」は、エンジニアリングと植物科学の専門知識を融合して生まれた、生物由来素材で構成された再利用可能な栽培培地です。「SmartSoil」は、「水を保持する機能」「根を物理的に支える構造」「植物と相互作用する化学的表面」を工業的に再現するという独自の考え方に基づいています。
従来のロックウールやココピート、ウレタンなどの培地とは異なり、形状や空隙構造、保水性、表面化学を設計できるため、作物や栽培システムに応じた最適な調整が可能です。この技術により、ライフサイクル全体におけるCO2排出量を最大で65分の1に削減できるほか、作物によっては最大10回の再利用が可能となり、栽培コストの低減にも貢献すると期待されています。将来的には、植物の免疫を刺激する天然由来分子を表面に固定化することで、病害の抑制や成長促進を図る高機能版の開発も進められています。
国内実証と社会実装への道筋
マクニカは、「持続可能な地球環境を創る」ことを重要課題の一つとして掲げており、これまで次世代植物工場向けサービスの開発に必要なデータを収集する拠点として「Food Agri Tech Incubation Base(FIB)」を開設し、企業との協業や実証実験などを通じて、環境制御型農業の社会実装に取り組んできました。
今回のMOU締結を受け、マクニカはFIBに「SmartSoil」を導入し、生成AIや各種センサーを活用したデータプラットフォームを通じて、従来の栽培培地との比較による成長性や運用性の検証を行います。この実証で得られた技術的知見はリラタ社と共有され、「SmartSoil」の改良と社会実装が推進される予定です。これにより、環境負荷やコストを低減しつつ、生産効率を維持・向上させる環境制御型農業の実現を目指します。
各社の概要
Lyrata Inc.について
リラタ社は、トロント大学工学部からスピンアウトしたアグリテック/クリーンテック企業です。エンジニアリング、植物科学、そしてVECTOR INSTITUTEのAI技術を融合し、環境負荷を低減する屋内農場向けの次世代栽培媒体「SmartSoil」の開発に取り組んでいます。
同社の発明である「SmartSoil」は、Falling Walls Lab 2024において「世界の今後有望な科学的ブレークスルー100」に選出され、カナダ政府およびオンタリオ州政府の支援のもと、日本市場での商業化が進められています。
詳細については、リラタ社のウェブサイトをご覧ください。
株式会社マクニカについて
マクニカは、半導体、サイバーセキュリティをコアとして、最新のテクノロジーをトータルに取り扱う、サービス・ソリューションカンパニーです。世界33か国/地域100拠点で事業を展開し、50年以上の歴史の中で培った技術力とグローバルネットワークを活かし、AIやIoT、自動運転などの最先端技術の発掘・提案・実装を手掛けています。
詳細については、マクニカのウェブサイトをご覧ください。
まとめ
マクニカは、本取り組みを通じて、持続可能な食料基盤の実現に貢献していく方針です。今回のMOU締結は、環境負荷の低減と食料生産の効率化を両立させる、次世代の農業の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。


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