調査概要
本調査は2026年2月にオンラインアンケート形式で実施されました。世界133か国、4252の組織から回答が寄せられ、企業の人事およびトータルリワード分野の専門家が対象となりました。組織の規模、地域、所有形態は多岐にわたります。
主な調査結果:三つの人材層における変化
AIの進展は、以下の三つの人材層において職務内容と報酬に異なる影響を与えていることが判明しました。
1. AI技術を中核スキルとする専門職:報酬プレミアムが顕在化
AIエンジニア、データサイエンティスト、機械学習の専門家など、AI技術そのものを中心的なスキルとする職種では、需要の拡大が続いています。これらの職種では、同等の職務と比較して10~15%程度の報酬プレミアムが一般的になりつつあります。
一方で、これらの職務は進化のスピードが非常に速いため、外部の報酬サーベイや市場データの更新が追いついていない状況です。このため、企業は外部ベンチマークに加え、社内での判断をより重視する傾向を強めています。
2. AIの影響を受ける既存職務:「報酬削減より再設計」が主流に
回答者の76%が「AIが職務に与える影響は加速している」と認識していますが、現時点で明確に影響を受けている職務は全体の5~10%程度にとどまっています。AIの導入により業務内容や職務価値が変化するケースは見られるものの、ベース給与の引下げ幅は5〜10%程度にとどまることが多く、多くの企業では報酬削減よりも職務の再設計、役割の再定義、そしてリスキリングやアップスキリングを優先する姿勢が確認されました。
3. AI変革を牽引するリーダー人材:期待と報酬が上昇
AIを活用した変革を組織全体で推進できるAI対応リーダー人材への需要が高まっています。特に変革の初期段階においては、こうしたリーダーに対して報酬プレミアムやインセンティブ設計の見直しを行う企業が増加しています。また、短期・長期インセンティブにおいて、デジタル化やAI活用によるビジネス成果を評価指標に組み込む動きが進んでいます。
調査から導き出される示唆
本調査結果は、すべての職務が一様にAIの影響を受けるわけではないことを示しています。その一方で、AIを中核スキルとする専門職、AIの影響を受けて再設計が求められる既存職務、そしてそれらを主導するリーダー人材という三つの層で、報酬の考え方が分かれ始めていることが明らかになりました。
AIの進展は、従来の職務ベースの報酬モデルから、スキルおよびケイパビリティ(能力)ベースの報酬モデルへの移行を加速させていると言えるでしょう。その結果、リワードリーダーには、より高度なデータ分析力やAIに対する理解、そして不確実性の高い状況下で判断を下す力が求められています。
コーン・フェリー・ジャパンのデジタル部門カントリーリーダーである岡田靖代氏は、「AIは単に人の仕事を置き換える存在ではなく、仕事の内容を変え、新しい専門職を生み、そしてそれらをどう活かすかという判断を人間に求める存在です。今回の調査が示しているのは、AIと人がどう共存し、仕事と報酬をどう再設計するかという視点の重要性です。事業戦略の中にAIをどう位置づけるかが企業の競争力を左右する時代に入っています」とコメントしています。
詳細な調査結果は、以下のレポートリンクから確認できます。

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