「第3回伊藤熹朔記念賞」受賞者発表!舞台芸術を彩る美術の功績に光

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第3回伊藤熹朔記念賞の受賞者が決定

2026年4月15日から26日まで東京芸術劇場アトリエウエストで開催された選考会を経て、「第3回伊藤熹朔記念賞」の受賞者が決定しました。演劇ジャーナリストの徳永京子氏、明治大学国際日本学部教授の萩原健氏をはじめとする7名の選考委員による厳正な審査の結果、各賞の受賞者が選出されています。

贈賞式は2026年5月25日17時より、紀伊國屋ホールにて執り行われる予定です。

伊藤熹朔記念賞とは

伊藤熹朔記念賞は、日本の舞台美術における顕著な功績を称える、国内唯一の専門的な賞です。1967年に日本舞台美術の先駆者である初代協会会長、伊藤熹朔氏(1899-1967)の功績を記念して創設された「伊藤熹朔賞」が前身となっています。

当初は「熹朔の会」によって運営されていましたが、1973年からは日本舞台美術家協会がその名称と精神を引き継ぎ、舞台美術の年間最優秀作品の授賞を継続してきました。1977年には特別賞、1986年には新人賞、1996年には奨励賞が新設され、その評価を確立しています。

2021年には法人化への移行に伴い、さらなる舞台芸術の創造発展を目指し「伊藤熹朔記念賞」と改称されました。

本賞は、舞台美術における装置、衣裳、小道具、かつら、メイクなど、あらゆる要素を対象とし、最優秀作品を表彰します。新人賞は舞台美術歴10年以内または40歳以下の新人、奨励賞は制約された条件下での活動や長年の実績、新たな取り組みを評価します。特別賞は、長年にわたり舞台美術全般の研究・教育・発展に寄与した個人や団体に贈られます。

第3回伊藤熹朔記念賞 受賞者紹介

本賞:松生紘子氏(装置)

受賞作品は『歌劇 水車屋の美しい娘』です。

歌劇 水車屋の美しい娘の舞台美術

選考では、1日限りの公演や反響板という大きな制約がある中で、「スズランテープ」という安価な素材を用いて水や時の流れを見事に表現した点が評価されました。空間を大胆に切り取る潔さと、嫌味のないパワーをもたらす立体的な構成が絶賛され、本賞に最も相応しい作品と評されています。

松生紘子氏は大阪芸術大学を卒業後、劇団四季に在籍し、その後渡英してRoyal Central School of Speech and Dramaで空間デザインの修士課程を修めました。帰国後も数多くの舞台作品を手がけ、第44回伊藤熹朔賞奨励賞、第1回伊藤熹朔記念賞本賞を受賞するなど、高い評価を受けています。現在は大阪芸術大学舞台芸術学科の客員准教授も務めています。

新人賞:久保田悠人氏(装置)

受賞作品は音楽座ミュージカル『ホーム』と東京二期会オペラ劇場『さまよえるオランダ人』です。

音楽座ミュージカル『ホーム』の舞台

東京二期会オペラ劇場『さまよえるオランダ人』の舞台

『ホーム』では、昭和30年代の街並みを綿密にリサーチし、狭い空間に構築する若々しい挑戦や、蛍光塗料を用いた演出への説得力が評価されました。『さまよえるオランダ人』では、ワーグナーの音楽に負けない力強い空間構成が見事であると評され、同時代の絵画の要素を取り入れつつ、明るさと洗練が共存する表現が新鮮であると高く評価されました。

久保田悠人氏は1990年生まれで、早稲田大学建築学科を卒業後、舞台美術家である伊藤雅子氏に師事し、2019年に独立しました。近年の主な作品には、TSP『サド侯爵夫人』、東京二期会オペラ劇場『さまよえるオランダ人』、音楽座ミュージカル『リトルプリンス』などがあります。

奨励賞:根来美咲氏、松村あや氏(装置)

受賞作品は「みんなのリトル高円寺 ウミゾコアイランドがあらわれた!〜ツナガルツアーへ出航〜」です。

劇場を使い長期間にわたり子供たちと触れ合い、共同でプランニングして空間と人を作り上げていくというプロジェクト性の高さが評価されました。段ボールやペットボトルなど身近な素材を活用し、長時間の体験型演劇という制約を見事にクリアしたチームでの取り組みは、演劇の社会的な繋がりに寄与するアートの観点からも奨励賞にふさわしいと絶賛されています。

根来美咲氏は大阪芸術大学を卒業後、劇団青年座に入団し、ストレートプレイからミュージカル、子供向けステージまで幅広いジャンルで活動しています。2014年には第41回伊藤熹朔賞新人賞を受賞しています。

松村あや氏は佐賀大学卒業後、日本工学院専門学校で学び、舞台美術家である島次郎氏に師事しました。現在はフリーランスの舞台美術家として活動しており、劇場創造ネットワーク『みんなのリトル高円寺』や江戸糸あやつり人形結城座『変身』などの作品を手がけています。

特別賞:下重恭子氏(帽子・ヘッドドレス等製作)

デザイン業務以外の活動で舞台芸術全般の発展に顕著な功績を残した正会員として選出されました。オペラやバレエに不可欠な帽子やヘッドドレス等の製作において、時代物から動物や植物を模したシュールな被り物まで幅広く製作し、演出や演者のストレスを軽減しつつデザイナーのイメージ以上のものを具現化する想像力と造形力が、日本の舞台業界を支える唯一無二の存在であると高く評価されました。

オズの魔法使いの登場人物に扮した5人

下重恭子氏は1980年に株式会社光子館に入社し、人形劇特殊美術製作に携わりました。その後、故・小寺洋子氏に師事しヘッドドレス製作を始め、アトリエ「Chapeaune」を設立。演劇、バレエ、オペラ、ミュージカル、テーマパークなど年間40本以上の舞台に関わっています。2005年には文化庁新進芸術家海外研修制度でパリ・オペラ座等で研鑽を積んでいます。

日本舞台美術家協会について

一般社団法人日本舞台美術家協会(略称JATDT)は、1958年に初代会長の伊藤熹朔氏を中心に発足した、国内唯一の舞台美術家の職能団体です。舞台芸術において視覚的・美術的な側面から演出に参画する創作者、技術者、教育者、研究者が集い、日本の舞台芸術全般の発展と高揚、舞台美術家の創作環境の向上を目指して活動しています。

2019年12月に法人化し、全国の舞台美術家の「創作活動に対する支援」「社会的地位の確立」「人材の育成」「専門的技術の記録・保存」などを主な目的として、さまざまな事業活動を行っています。

詳細は協会ホームページをご覧ください。

一般社団法人 日本舞台美術家協会

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